結城座 糸あやつり人形で「伽羅先代萩」

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日曜の午後は武蔵野芸能劇場で、結城座公演をお初で拝見。
江戸時代から375年の歴史をもつ糸あやつり人形劇団、だそうです。吉祥寺のくぐつ草という喫茶店が、ここの関係だということはン十年前からしってたんだけど、なんだか「あやつり人形」というのが想像がつかなくて、あるいはひどく子どもっぽいものを思い浮かべてなんとなくご縁がなかったのでした。

出し物は歌舞伎でいままで2回見ている「伽羅先代萩」なので大丈夫なはず。

思った以上に糸がいっぱい=関節が多い=動きが細かい! 取っ組み合いの場面なんか糸が絡まっちゃわないのかはらはらするほど。
しかもさらにたいへんなことに、人形遣いがセリフを語るのだった。歌舞伎と文楽の中間形とでもいいましょうか。文楽は動きが人形、ことばは全部が義大夫ときっちり別れ、同じ話でも歌舞伎の院本ものは詞は役者、地と色をちょぼの義太夫という分担になっているけれど。この場合は役者の代わりに人形遣いが詞をしゃべる。 あんな糸いっぱいあやつりながら、これはなかなかたいへんそう。

花水橋の場は、歌舞伎で見たのとはがらっと違い。まず夜泣き蕎麦のおじさんと客の会話で事件の説明、登場人物もみんなここで分かるというまことに行き届いた仕込み。かつ、「昨日来日したオバマが」とか時事ネタも盛り込んで生き生きとやるので、これはケッコウオモシロイカモシレナイ。
歌舞伎だと殿様と贔屓の相撲取りが、暗殺隊あいてに立ち回りなんだけれど、こちらでは、この二人は出ずに、後で「床下の場」で出てくる「荒獅子男之助」が「松が枝節之助」という本名(?)で大立ち回り。顔の前半分を切り落とされてぺろりとか、切られた手足が飛び回るという表現は、歌舞伎でも見たことがあるけれど、さらに人形ならではの表現で、胴切りで体が上下に泣き別れたり、真っ向から竹割りに切られて縦に半分に割れたり、首が引っ張られてろくろっ首になったりと、次々におもしろいことをやってくれるので客席大受け。

(飯炊きの場は時間の関係で省略。こういう場ですという説明を幕前で。まあ、ちっちゃいお人形がお米研いでいてもあまりもりあがらないかな)

御殿の場は、幕が開いたとたんに、おおっと観客席からどよめき。同じ舞台がさっきよりどっと広く歌舞伎座のように錯覚したのは、遠近法を使った千畳敷の広間のなかに、人形だけが座っていたからすごく舞台が大きく見えた。最初の場は、黒子姿の人形遣いがもちろん一人一体の後ろについて操っていたのが、今度はかなり長い糸を使って、天井から姿を見せずに操っていたのだった。視覚効果ばっちり! ここからは義大夫に載せて進み。千松が殺されて、正岡のくどきになってからは、座長の出遣い。操りも台詞も確かにほかの役者=人形遣いとはさすが一線を画す上手さ。

最後、床下の荒事があって(この荒獅子の台詞は力みかえっているだけで、まだまだだめだめな感じ)、花道(壁際だけど花道でいいのかな)をふわりふわりと弾正のひっこみを、これも座長さんが巧みに操って幕。

ええと、ひとつだけよく分からなかったのは、栄御前から正岡に肝心要の巻物がわたらず、当然それを鼠に化けた仁木弾正が奪い取るところもなく、床下で鼠が巻物を持っていたかどうかは遠くてよく分からず、最後の弾正の引っ込みは、巻物持っていなかったと思う・・・ので、なんか大事な筋が通ったような通らないような・・・^^;) 巻物渡したり、咥えたりするのがたいへんなのかしらん。

なんだか、伝統芸能保存の死に体の退屈な芸かも・・・と思っていったのだけれど、いえいえ、なかなかちゃんと楽しめるエンターテインメントしてました。来年も武蔵野でやる予定らしいので、演目が違えば行ってみるつもり。

誠に惜しいのは、義大夫がテープだったこと、竹本素京さんという90何歳まで現役だった女太夫さん(劇団の肝っ玉母さんだったらしい)が、数年前に亡くなってしまったので、そのテープでの公演。後継者はさすがに育っていないのでしょうか、やっぱり生だと声も三味線も全然迫力が違うので、なんとか、また生の義大夫でできるようにがんばっていただきたいもの。

ほか、新しい試みもいろいろやっているらしく、夏にあった乱歩の公演は行き損なって残念。「江戸うつし絵」っていうのがどういうのかも興味有り。席が後ろだったので顔もよく分からなかったし、人形がどういう構造でどう操っているのか詳しく見たかったなあと思ったら、ちょうど12月の頭から銀座のINAXギャラリーで展示会あり。

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このページは、かえるが2009年11月16日 16:35に書いたブログ記事です。

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